【今日のコラム】2025年5月30日(金)

取締役の退任と競業避止義務について

会社の取締役が退任する際に、競業避止義務を課すことができるかどうかについて、会社から相談を受けることがあります。特に中小企業においては、取締役が営業の窓口としてお客様と深く関係を築いていることが少なくありません。このような取締役が退任後に独立して事業を起こしたり、他社の取締役に就任したりすることで、顧客を引き抜かれる心配があります。

しかし、取締役個人には職業選択の自由が認められており、取締役が会社を辞めて他社に移籍したり、独立して事業を立ち上げたりするのは、原則として自由です。

では、会社としてどのような対応が可能でしょうか。まずは、取締役との関係を良好に保ち、退任後も円満な関係を維持することが大切なのは言うまでもありません。しかし、常にそのように進むとは限りません。そこで、取締役の退任時に「競業避止義務に関する誓約書」を締結してもらう方法が考えられます。

もっとも、裁判例では、何の限定や対価も支払わずに取締役に競業避止義務を課す場合、その合意は無効と判断される傾向にあります。したがって、競業の場所や期間を適切に制限した上で、合理的な対価を支払う旨を明記することで、その合意が有効と認められる可能性が高まります。

具体的に、どの地域で、どの程度の期間、どの程度の対価を設定すべきかは、その取締役の担当していた職務内容や会社の特性などを踏まえ慎重に検討する必要があります。

これは、中小企業が念頭に置いておくべき重要な課題であると言えるでしょう。

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