6月17日(火)物流業と優越的地位の濫用【今日のコラム)

公正取引委員会がスーパーのロピアに立入検査に入ったとの報道がありました。独占禁止法が規定する優越的地位の濫用(同法2条9項5号)の疑いがあるとのことです。以前にも、食品等の小売業を営む会社が納入業者に様々なことをさせて問題となった事案があります。このコラムでも過去に紹介しました。物流業でも、納入先で慣習上行われている過剰なサービスはあるのではないでしょうか。

過去の事案を以下に再度掲載します。

A社は地域において食品等の小売業を営む会社でした。A社に商品を納入している納入業者の中にはA社との取引がなければ事業を継続できないほどにA社の影響力を強く受けている業者もありました。そのような状況から納入業者の中にはA社からの様々な要請を断れない立場にある業者もありました。
まず、A社は、新規開店等の際に商品の陳列等をさせるために納入業者の従業員を派遣させていました。
また、A社は、納入業者に対して、当該業者に帰責性がなく返品条件の定めもないままに商品を返品していました。
さらに、A社は、店舗で割引販売を実施した際に割引額を納入業者に負担させていました。
公正取引委員会は、これらのA社の行為について、以下のように判断しました。
「A社は、自己の取引上の地位が相手に優越していることを利用して、正常な商習慣に照らして不当に
1 継続して取引する相手方に対して、当該取引に係る商品以外の商品を購入させ
2 継続して取引する相手に対して、自己のために金銭又は役務を提供させ
3 取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、又は取引の相手方に対して取引の対価の額を減じていた
のであり、独占禁止法2条9項5号に該当し、同法19条の規定に違反する。
そして、公正取引委員会は、A社に対し2億円以上の課徴金納付を命じました。
本件の事案は、小売業の納入業者に対する行為が問題になりましたが、荷主の物流事業者に対する行為も同じです。
公正取引委員会は、今年6月、荷主と物流事業者との取引に関する調査結果及び優越的地位の濫用事案の処理状況について発表しています。そこでは、荷主約18000名及び物流事業者約20000名から調査結果を回収し、そのうえで荷主12名に対しては立入調査を実施したとしています。そのうえで、公正取引委員会は独占禁止法上の独占禁止法上の問題につながるおそれのあった荷主573名に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付した、としています。
注意喚起文書を送付した荷主の行為類型として、買いたたきが239件、代金の減額が142件、代金の支払遅延が117件などを挙げています。令和4年の発表でも641名に懸念事項を明示した文書を送付したとされています。2年前の発表から文書を送付した荷主の数は減ってはいるものの改善には遠い状況となっています。
買いたたきの事例では、荷主が運賃引き上げを求められたにもかかわらず、物流事業者が自助努力で解決する問題であるとして運賃の引き上げ協議を拒否したという事案も具体例として挙げられています。
そして、同委員会は、今後の取組について、優越的地位の濫用に当たり得る具体的な事案に接した場合には、引き続き、独占禁止法に基づき積極的かつ厳正に対処していくと明言しています。公正取引員会のこのような発表からは、物流業界について特に問題があるとして注目していることが見受けられます。

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